皆様、こんにちは。心理セラピストの黒田美保です。留学便りの第2便です。はやいもので、TEACCHで研修を初めてから半年が過ぎました。今回は、子どものソーシャルグループ、チャペルヒルで行われたウィンター・インサービス(TEACC のセラピストや教師の研究発表)の様子をお知らせします。
■児童対象のソーシャルグループ
WilmingtonTEACCHCenterでは、ソーシャルグループと呼ばれるソーシャルスキルや仲間づくりに焦点をあてたグループに力を入れています。年齢別にいつくかのグループがあります。留学便り1でご紹介したサパークラブも成人対象のソーシャルグループであり、1994年発足当時はソーシャルスキルグループとよばれていたそうです。その後、ソーシャルグループ、サパークラブと呼ばれるようになりました。さて、子どものソーシャルグループの対象は、年齢別で、小学校3、4年のコブラグループ、5、6年(6年はこちらでは中学1年になります)のバディーズグループ、高校生のフレンズグループなどがあります。これらのグループは6、7人のグループからできていますが、もう少し年齢が低いグループでは、ペアで活動するグループもあるとのことです。各グループとも、ほぼ毎週あり、2ヶ月半が1クールで終了となるようで、年に年1回開催されることが多いようです。グループ終了時には、希望によって連絡先や興味のあることを書いた用紙を交換し、日常生活の中でも交流できるように工夫しています。ここでは、コブラグループとフレンズグループについてご紹介します。
コブラグループでは、子ども達がグループに参加している間、同時進行の親のミーティングが行われます。どのグループについても親ミーティングがあるわけではありません。初めてグループに参加する子ども達の多いグループでのみ、親ミーティングを開催するとのことです。親ミーティングでは主にセンターのディレクター(センター長)やセラピストが講義をして、それをもとに親から質問をしたり、親同士がディスカッションするという流れです。親ミーティングの目的の一つは親同士の連携をとることでもあるので、ディスカッションに時間を割いています。まず、子どもセッションについてご紹介します。グループの活動時間は90分です。当然ですが、グループの活動にも、構造化のアイディアが活かされています。
全5回の流れの中で、手作りのゲームを通してメンバーのことを知ったり、関わりを持ったり出来るように工夫をしてあります。また、声の大きさを調節するのが苦手なメンバーが多く、また、1人が騒ぎ出すとみんなが騒ぎ大きな声が飛び交うので、ボイスメーターを使用ました。最終的にボイスメーターを使ったゲームをセラピストが考案しました。サイコロを投げて、それが示す声の大きさで決まった単語やセンテンスを話します。大きな声で友達の名前を呼んでみる、ささやくような声で呼んでみるなど、ゲームを通して楽しみながら練習しました。また、大きな声を出してもよい場所、普通の声で話す場所、小さな声で話す場所などを話し合いました。
ゲームで使用したボイスメーター(写真)は、このグループの担当セラピストが考案し、meterMonitordfnbach@aol.com(809CascadeRd. Wilmington,NC28409)で販売しているものです。声の大きさが視覚的にわかるようになっています。
<母親のグループミーティング>
ディレクター(センター長)の担当で、「ソーシャルストーリー」「兄弟との関係」「感情の理解と調節」についての講義や情報提供、親御さんからの質疑などが行われました。これらのテーマは親御さんからでたもので、多かったものを選んだり、実際のグループでの子どものたちの様子からもテーマを選び直しています。「兄弟との関係」については、http://www.sibs.org.uk/というホームページが紹介されました。
<フレンズグループ>
高校生のグループです。男子5名、女子1名の構成です。大人のソーシャルグループに近く、ボーリングなどのレジャーにでかけます。最初の2回はスーパーウノというゲームをしたり、自己紹介をおこないました。また、これからの活動の予定を自分たちで立てますが、選択肢の中から選ぶという形になっています。各回とも、スケジュールやチョイスボードなどが用意されています。最終回では、電話番号と各自の興味のあることを書いた用紙が交換し、グループ終了後も交流を続けられるように工夫されています。
余談ですが、両グループとも、おやつの時間には、ピザがでます。ピザ屋さんからピザが3枚届きます。1人2〜3ピース食べますが、たくさん食べる子は6ピースくらい食べてしまいます。放課後でお腹が空いている子が多いためですが、おやつがピザとはさすがアメリカと思ってしまいました。
■ウィンターインサービス
ウインターインサービスとは、TEACCH関係者(各センターのディレクター、セラピスト、を中心に、TEACCH以外の教育関係者、保護者の方も参加できます。)向けの研修です。年に一度、 TEACCH部が属しているノースカロライナ大学医学部のあるチャペルヒルで3日間行われ、延150人くらいの人が参加するようです。朝から夕方まで幼児から成人までのさまざまな試みや発表が同じ時間帯に平行して4セッションずつ行われます。
どの発表も興味深く、どれに参加するか悩んでしまうこともしばしばでした。この発表以外に、食事会や夕食後の Make it &Take it (教材を実際に作ってもってかえる)セッションありと盛りだくさんの内容でした。TEACCHの主任教授であるメジボフ先生をはじめ、全TEACCHセンターのスタッフが一同に会し親睦を深めることも1つの目的のようで、夕食会には、TEACCHの創始者であるショプラー先生とセラピストでいらした奥様もみえました。その日はショプラー先生の誕生日で、会場皆でハッピーバスディを歌いました。TEACCH部は一つの家族といった温かい雰囲気を感じました。
さて、発表ですが、1つのセッションに1時間がとられているので、かなり詳しい内容が聞け、フロアからの質問も時間もかなりあります。 今回は、その発表の一つ“ Icon to I can − Looking Ahead to What Counts for Students with Autism Spectrum Disorders ”をご紹介したいと思います。まとめの部分は、よこはま発達クリニックにもおみえになっている田中恭子先生(現在、 Fayetteville TEACCH Center 留学中)がまとめてくださったものです。発表者は、バーバラ・ブルームフィールドとおっしゃる方で、長くスピーチ・ラングイッジ・パソロジスト(言語聴覚士)として学校で働き、現在は、ニューヨークでASDのお子さんのためのセラピーやコンサルテーションをされています。彼女のサイトは http://www.icontalk.com/index.htmlです。また、発表の前には2晩(8時から10時過ぎまで)続けて教材作りの Make it &Take it のセッションをやっておられ、非常に情熱的でしかも体力のおありの方だと感じました。田中先生と私はブルームフィールドさんの全セッションに参加しました。
<以下田中恭子先生によるまとめです>
ブルームフィールドさんは、自閉症の人たちの非就職率が、75〜95%にのぼるという文献を提示しました。就職率が下がる要因として、自閉症の人たちの孤立して働く傾向、社会的なコミュニケーションの弱さ、プランニングや組織化(物事を順序立てたり整理したりする力)の弱さ、日常生活技術(特に身だしなみを気遣う力)の弱さをあげています。その通りだと思います。Adreon( www.asperger.netのNewsletter_Winter_2005-2006.pdf)は、高校卒業後の生活に備えて子どもに教えるべき10のスキルについて、次のようにまとめています。そして今回の演者は、この10 のスキルにそって、構造化の具体的なアイデアと参考になるウェブサイトをたくさん提示してくれました。ただ構造化しなければといわれても何を目標にしたらいいのか分からない、という方達のためには、良い指針だと思いました。
1.目覚ましで起きることを教える
2.時間がわかるように時計(デジタル、アナログ)の見方を教える
参考 HP www.tinsnips.org www.themathworksheetsite.com www.dotolearn.com
身支度を時計とマッチングさせてできるようにするというのもアイデアです(時計が理解できなくても、数字や色、針の形をマッチングさせるなどのアイデアもあります)。時間を学ぶために工夫された時計は、Teaching Hands Clock(www.autismcoach.com)、Magnetic Matching Clock ( www.autismcoach.com)などがあります。時間が過ぎていることを知らせるためのトランジッションのストラテジーとしては、カウントダウンカード(5,4・・・と視覚的に分かる)、「あと1分」カード、タイマーなどの使用があります。タイマーは Time Timer(www.timetimer.com)などのお薦めがありました。
3.適切に身支度を整えることを教える
入浴や髪を整えること、歯磨き、体臭に気をつけることや衣服を整えることなどです。Visual Thermometer(www.autismcoach.com)という面白いものもありました。外気温にあわせてどんな洋服を着ればいいかを、視覚的に表示してくれます。何を着たらいいのか分からない、気候に合った服を選べないという方には便利だと思いました。
4.自分のことは自分でできるように教える
当たり前のようですが、例えば本人が時間割りを揃えたり、ファスナーを閉めたりすることに、周囲が待ち切れずに手を出してしまいがちだと指摘されていました。なるべく多くのことを自分でできるように工夫することは、成人期を考えるととても大事なことですね。
5.課題を思い出せるように視覚的なキューを使うことを教える
今何をすべきかを思い出したり、次は何かを見通して活動したりするときに、スケジュールはとても役にたちます。社会人であれば、自閉症の人たちに限らず、みんな予定に従って働いていますよね。そう考えると、スケジュールに親しんでおくことは学校にいる間に学ぶべきだと分かっていただけると思います。一つ一つ指示や注意を受けるのではなく、リマインダーを用いて自立して活動できることを増やすことも大事です。
6.簡単な料理を作ることを教える
よく言われることですが、料理という活動自体がとても良い学習機会ですし、動機もみつけやすいですし、就労の可能性にもつながります。お薦めサイトはwww.tinsnips.org 、www.angelfire.com/pa5/as/です。
7.電話の使用を教える
使えたら便利ですが、使い方、教え方にも注意が必要と思います。
8.一人ででかけることを教える
遠くにでかけるということでなくとも、短い距離を目的にそって移動できるとよいですね。学校で教室を移動したり、先生に何か用事を伝え(言葉を発しなくてもメッセージを伝える)に行けたりできれば、活動の幅は広がります。
9.でかけるときに持っていくものを揃える
毎日保護者が揃えるのではなく、持っていくもの、持っていかないものが視覚的に分かるように整えられていれば、自分で揃えることができるでしょう。
10.安全について教える
パーソナルエリアや個人情報の守り方などを教えておく必要があります。