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TEACCH留学便り・・・Vol.5
(学校編2:小学校、中学校、高校)

皆様こんにちは。前回の続きで、今回はWilmingtonの小学校のセルフコンテイン・クラス、中学校、高校のセンターベースト・クラス、そしてユニークな学校チャーター・スクールについてお伝えします。また、IEPミーティングやTEACCHセラピストによるスクール・コンサルテーションの様子もお伝えしたいと思います。

■小学校のセルフコンテイン・クラス

まず、小学校の自閉症のセルフコンテインと呼ばれるクラスについてです。このクラスは、知的障害を合わせもつお子さんのためのクラスです。小学校には、知的障害を伴わないASDのためのクラスはなく、こうしたお子さんは普通クラスに在籍していてニーズに応じてリソースルームで指導を受けています。さて、Wilmingtonには、5つの小学校にセルフコンテイン・クラスがあり、そのうち4校がTEACCHのコンサルテーションを受けています。残りの1校は、ABA(応用行動分析)による指導をしています。今回ご紹介するのは、TEACCHセンターと密接に連絡をとりあって、クラス運営をされている小学校のクラスルームです。クラスの生徒数は6名で、担任が1名、そして、パラエジュケーターが6名となっています。つまり、1対1体制でお子さんを指導する方がいるわけです。担任によると、校長先生へ毎年要請して、今年から1対1体制になったそうです。教室は、主に学習を行う部屋と遊びの部屋の2つがあります。どちらの部屋も高度に構造化されています。学習は、自立課題と1対1で指導する課題にわかれていて、午前中の早い時間に自立課題を写真のように、それぞれのブースで行っています。その後、スナック・ランチ・遊びの時間などをはさんで1対1の指導、クラス全体での活動などとなっています。各自にスケジュールが用意されています(お子さんによって、実物、絵カードなどを使っています。また長さも1日のスケジュール、半日、次の活動のみと、さまざまです)。また、視覚的構造化も多くあり、指導時には写真のような課題指示のカード(以前ご報告したWISでバーバラー・ブルームフィールドさんがご紹介されていたものです)が使われていましたが、担当の先生によると、これを導入してから、お子さんが課題指示を理解しやすくなったそうです。

■中学校のセンターベースト・クラス

中学校・高校には、セルフコンテイン・クラスだけでなく、知的障害を伴わないお子さんのためにセンターベースト・クラスとよばれるクラスがあります。センターベーストとは、学校内でASDのお子さんの基地となる場所という意味です。Wilmington全体で、セルフコンテイン・クラスが2校の中学に、センターベースト・クラスが同じく2校の中学に設置されています。また、Wilmingtonでは、知的障害を伴わない(高機能)ASDのお子さんへの教育サービスが、ここ数年で非常に充実してきたそうです。ところで、ノースカロライナ(アメリカのほとんどがそうだと思いますが)の中学校・高校のシステムは、日本と違いホームルームでずっと授業が行われることはなく、生徒が自分の選択した科目の教室に各自で移動するシステムになっています。自閉症クラスの先生が教えるのはライフ・スキルという科目になっています。このクラスには、ライフ・スキルの授業時にのみ来るお子さんもいれば、1日ここで過ごすお子さんもいるというように、各自のニーズによって様々です。このセンターベースト・クラスに属している生徒は13名で、学年は6年生から8年生までです。担任はSTの資格をもち、カルフォルニアで長く特殊教育の教師をされた後、Wilmingtonにうつってこられた方です。教室での工夫などについてまとめたブックレットも販売されており、そのホームページをお持ちですので、ご興味がおありでしたらアクセスしてみてください。
http://www.autismican.com

教室は、センソリー・エリア、クワイエット・エリア(静かに本を読んだりするエリア)、プレイ・エリアなどに分けられています。センソリーのエリア(感覚系のグッズがおいてあり、生徒がリラックスするためのエリア)には、重みのある膝掛けやベスト、マッサージ・マシーンなどユニークなものが色々おかれています。また、教室の隣には、卒業生の保護者の方の寄付でできたジムがあり、定期的に指導にこられるOTの先生と相談して、各生徒のメニューが決められています。センソリー・ダイエットとよばれるもので、最近アメリカで人気があるようです。適切な運動による刺激で精神的に落ち着いてから学習にとりかかるといった形で、このクラスでは導入されています。この教室から、他の授業に出かけるときは、パラエジュケーターが同行します。現在、パラエジュケーターは、7名です。

また、Wilmingtonの学校では9週間ずつが単位となって、9週間が4回で1年が終了となるというシステムですが、このクラスでは、9週間ごとにテーマがあります。社会ルール、マナー、感覚、行動のコントロールなどをテーマとして教えています。また、9月の新学期には、ライフ・スキル・クラスになぜいるのかを考え、ASDの特徴を理解して自分らしく生活出来るよう指導されているそうです。この時点で、自分の診断名を知らないお子さんについては、親御さんと相談の上、告知をすすめていくそうです。

■高校のセンターベースト・クラス

次に、高校のセンターベースト・クラスについてご紹介します。高校も、Wilmingtonに2校のセルフコンテイン・クラスと2校のセンターベースト・クラスがあります。今回ご紹介するクラスには、13人の生徒がいます。学年は9年生から12年生までです。また、ここの高校では、1日4こまで、毎日同じ科目を学び、1学期でその4科目の単位を取得すると、次の学期でその他の4科目の単位をとるというようになっています。1こまは90分です。生徒は朝、各自の時間割を確認しますが、パワーポントで示されたものをうつしたり、プリントアウトしたものを渡されるそうです。それに基づいて、活動していくとのことでした。また、各自の机には、科目が書かれた用紙(横10センチ、縦15センチくらい)がはってあり、時間ごとに宿題などが書き込まれています。ほとんどの生徒は、通常のクラスに行く時は、パラエジュケーターと行き、宿題などはその人が確認して、生徒の机の用紙に記入しています。宿題はセンターベースト・クラス(1日1こま程度、生徒によって異なります)でやる生徒もいますが、家でやる場合は、ノートにパラエジュケーターが記入、または、生徒が記入したものを確認して持ち帰ります。

そして、移動や切り換えに時間がかかるので、授業を10分前に切り上げてホームルームに戻り、次の授業の用意をします。ホームルームで過ごす時には、各自にワークシステムがあり、それに従って、宿題や個別の課題にとりくんでいました。また、定期テストの時にも、いろいろな支援が用意されています。例えば、試験をセンターベースト・クラスで受ける。試験時間を通常よりも長くしてもらう、逆に試験時間を通常の半分にし問題数も半分にする(得点を2倍する)、問題の選択肢を減らす、などです。

以上中学と高校のセンターベースト・クラスについて述べてきましたが、どちらのクラスにも生徒が自分の感情を表現しやすいように、机の上に、5段階のメーターや半円形のメーターなどが置かれていました。また、パラエジュケーターの方たちは、大学でいくつかの単位をとっているという条件はありますが、特別に自閉症の教育について学んだ方たちではないので、担任の先生は、その方たちへの教育にも時間を割いておられました。パラエジュケーターの方たち自身も、 TEACCH のワークショップに参加したり、 TEACCH センターでのソーシャル・グループを見学したりして、 ASD 支援のために努力されていました。

今回ご紹介したのは、 Wilmington の中でも、モデル的なクラスだと思います。前回の留学便りでもお話ししたように、 Wilmington の中でも学校によって支援に差があると感じまし、ノースカロライナ州全体でみれば、さらに地域格差、学校格差があると思われます。残念ながら、ノースカロライナのすべての学校がすばらしいというわけではないようですが、親が支援をいつでも頼める TEACCH という存在があることは大きな支えだと思います。

■Wilmingtonのユニークな学校

ケープ・フェアー・センター・フォ・インクアイアリーはチャーター・スクールとよばれる学校です。アメリカで最近できた学校のシステムで、地域の親が希望を出して、つまり、チャーターして作った学校ということです。公的な資金で設立されますが、運営は学校に任されているそうです。訪問した学校は、少人数の落ち着いた環境で、既製の教科書は使わずに、自由な中で各自にあった学習をするということを目的に設立された学校です。幼稚園から中学校までありますが、中学校以上では ASD 、 LD, AD/HD のお子さんがクラスの半分を占めるそうです。クラスの中で集団で学習するのが難しい科目については、写真のようなリソースルームがあり、そこで、視覚的な教材を使いながら学習をすすめています。入学希望者が非常に多く、くじ引きで入学者を決めているそうです。しかし、クラス全体のスケジュールは用意されていましたが、個別のスケジュールなどは用意されておらず、他の視覚支援もほとんどなく、自閉症の支援という観点からは弱いと思えました。

■IEP ミーティング

IEP(individual education plan個別教育計画)が各お子さんについて毎年作成されます。担任教師だけでなく、ST,OT,PTやスクール・サイコロジストの意見やプランものせられており、それを担当教師がまとめて作成しますが、膨大な量です。また、9週ごとに、お子さんの様子がプログレス・レポートとして報告されます。

中学校のセンターベースト・クラスに在籍しているお子さんのIEPミーティングに参加させていただきました。所要時間は1時間弱でした。思ったよりもリラックスした雰囲気で、ご両親以外にご両親のお友達も参加していました。また、学校側からは、担任、パラエジュケーターのほかに数学の教師も参加し、彼の得意科目である数学の様子について報告すると同時に来年度のアカデミックな目標について説明されていました。その後、担任教師が、コミュニケーション・社会性などの側面について、IEPの書類をもとに、ご両親と現在のお子さんの様子を確認し、さらにどういったことが必要か、また、どういった教育上のサービスがあるかが具体的に話し合われていました。また、再来年、進学予定の高校でどのような支援が受けられるかの情報提供も行われていました。小学校から中学、中学から高校への進学の際には、現在通っている学校と進学先の学校が共同でIEPミーティングを行い、情報を共有するという工夫もされています。これによって、進学がスムーズにいくよう配慮されています。

■スクール・コンサルテーション

TEACCHのスクール・コンサルテーションの様子です。WilmingtonのTEACCHでは、診断を受けたお子さんについて、保護者の希望があれば、学校へのコンサルテーションをすぐに開始します。4〜6週間かかる診断報告書の完成前に、すでにコンサルテーションは始まり、その後も継続されます。私が参加したスクール・コンサルテーションは2回目で、母親と担任である数学の教師、他に体育の教師とコーディネーターが出席し、セラピストから学校側へのアドバイスが主におこなわれました。1回目のコンサルテーションは、診断後2週間目で、学校での様子の聞き取りと同時のASDの特徴や配慮についての話が中心だったそうです。その時、担任教師は、お子さんの様子をASDのためとは考えられないといった感じで非常にネガティブにとらえていたそうだが、2回目のコンサルテーションでは特性と考えようというようにポジティブな態度に変わっていました。学校側から、具体的に学校でどういった支援をすればよいのかという熱心な質疑があり、教室で使えるアイディアや本の紹介などをセラピストが行いました。

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