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緊急アピールその2

キャサリン・ヒップルからのメイル(2002年2月6日付け)

「食いしん坊な脳うつになる脳」におけるアスペルガー症候群の説明についての見解

よこはま発達クリニック 内山登紀夫

「食いしん坊な脳 うつになる脳」(脳の不思議がわかる本、スティーヴン・ワー ン著/石浦章一監修/原山美樹子/宮島冬奈著/中経出版/2001年12月発刊)
(以下 本書)においてアスペルガー症候群に関する記載があります。アスペルガー症候群およびハンス・アスペルガーについて誤解に基づく記述があります。日本自閉症協会東 京都支部の皆さんのご尽力で出版社はあらたな出荷と広告を見合わせたとのことですが、すでに書店にある本を買われる方もいるでしょうから、誤解と偏見をとく努力はこれからも続けていきます。

キャサリン・ヒップルはオーストリアのウィーンに住む臨床心理学者であり、エリ オットハウス(ローナ・ウイングが顧問の英国自閉症協会が運営する診断機関)で研修したことがあります。現在ウィーンでアスペルガーの残したカルテを研究しています。内山とは面識はありませんが、同じエリオットハウスで勉強した一種の「同窓生」で、ウイング先生のお声係もあり数通のメイルを寄せてくれました。この文章はそれを要約したものです。日本語への翻訳、公開、内山による要約に快く同意してくれましのでここに公開します。なおキャサリンはアスペルガーとナチの関係についてアスペルガーの御嬢さんに問い合わせてくれました。

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キャサリンのメイルからーアスペルガーとナチの関係、そしてアスペルガー症候群の子どもの特性

今朝マリア・アスペルガー-フェルダー(ハンス・アスペルガーの娘)から返事をもらいました。マリアはハンス・アスペルガーはナチのメンバーだったこともなく 「ヒトラーユーゲンド」に関心を持っていたことも決してないということを書いてきました。アスペルガーは「Bund Neuland(連帯-新世界)」というキリスト教の青年組織のアクティブメンバーでした。この組織はドイツの青年運動と深い関連がありました。この組織が奨励していたハイキングや登山などのアウトドア活動に熱心でした。アスペルガーは大戦中にクリニックを去らなかったことで批判されることが多いのです。ユダヤ人であったり体制を支持しなかったという理由で他の人々はクリニックを去らねばならなかったのです。しかしアスペルガーは「医学研究・実験」のために子どもたちを他所に追い払うよりも、自分の病棟に子どもたちを留めることで一人でも多くの子どもを救おうとしたのだと推測されます。

アスペルガーは年少の患者について記録しています。私たちはアスペルガー自身による140のカルテを発見しました。彼の叙述には非常に豊かな創造力が窺えるのですが、それでだけでなく特別な子どもたちの真価を理解し共感をもって接していたのが確認できたことは大変に喜ばしいことです。「ナチ的な考え」を持った人物がこのような記録を残せるとはとても考えられません。アスペルガーがナチの思想に同意していなかったことは断言できます。

現在私はアスペルガーの残したすべてのカルテを調査しており、アスペルガーが患者について記載したことを検討しています。

「悪の英雄」とナチ思想に特に関心を示した子どもが140例中2例いたことがカルテの記述から推測されました。今のところアスペルガー症候群の患者が犯罪が関与したという十分な証拠は確認できません。(経過追跡研究の結果がでるまで待たなければなりませんが)。学校での攻撃性や「はみだした」行動がクリニックを受診する主な理由の一つだったようです(一番多かったのは学習の問題です)。興味深いことは攻撃性が強い子どもほど心配、不安、恐怖症の程度が強いのです。これは「結論」ではなくデータをインプットしているうちに受けた印象ですが、攻撃性と不安や恐怖との関連をより深く研究することは間違いなく有益です。アスペルガーは自分の患者の予後の良さを協調していました。ケースによっては彼のいう所の「自閉的意地悪」について報告しています。アスペルガーの患者のなかに彼が非常に優れた観察者であると記した知的な子どもたちがいました。彼らは他者の弱点を一瞬で見抜くことができたのです。彼らは「素朴さ」のゆえに、思ったことをただ言葉にしたのです。その言葉はときに他者をひどく傷つけたかもしれません。アスペルガーの子どもが人を傷つける発言をしたとしても意図的ではなく「無邪気」さからなのでしょう。

対補(内山による)

ナチの台頭以前のドイツでは、各種の青年運動が盛んに行われていた。ワンダーフォーゲルなどのアウトドア活動を奨励するものやキリスト教系の青少年組織などが2000以上存在していた。ナチはこのような非ナチの組織を禁止し、ナチスの青年運動組織すなわちヒトラーユーゲンドへの参加が1939年の条例によって強制されることになった。

(参考文献:ヒトラーユーゲンド、B・Rルイス著、大山昌一訳、原書房、2001年)

2002年2月11日

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